ロシア学校占拠事件。テロ非難だけでよいのか!

 9月1日、ロシア南部の北オセチア共和国で起きたチェチェン独立を求める武装集団による学校占拠事件は、4日未明にロシア連邦軍が武装集団を完全制圧して終わった。犠牲者は300人以上になりそうで悲惨な結果になった。この事件について、米、独、仏、中国等が反テロ声明を出して、テロとの戦いを表明した。しかし、ちょっと待って欲しい。今回のテロは、子供を対象にし、確かに非難されるべきものである。もし、単なる爆弾テロなどであったら、その卑怯さに対して私も非難する。しかし、今回だけではないが、犯人たちは自分達も死を覚悟した犯行である。犯人の中には女性もいたらしい。チェチェン独立闘争で夫や友人を失った女性達らしい。

 今回の事件でも(今回だけではないが)、テロは世間から非難される。しかし、何故そのテロが行われたのかが、あまり議論されない。犯人達も命を掛けたテロなのだから、その裏にはよっぽど何かあると考えるべきである。
 事件のあった北オセチア共和国やチェチェン共和国を含むカフカス地方は、民族、宗教、歴史、油田等の問題が複雑に絡み合った地域であるらしい。特にチェチェン共和国は19世紀半ばに南下してきたロシア帝国に併合され、ロシアの植民地化に激しく抵抗したが、徹底的に抑圧され、1944年にはナチス・ドイツに協力した疑いで、チェチェン住民は中央アジアに強制移住させられている。91年のソ連崩壊の折にチェチェンは独立を宣言したが、これを認めないロシアは94年に軍事侵攻し、民間人を含めたチェチェンの犠牲者は数万人と言われている。このような問題を放置したままでの反テロ声明が片手落ちであることは、明らかである。

 米、独、仏、中国等が反テロ声明を出したが、これも人道的見地から出したとは思えない。独は置いておくとして、仏英などは現在でも植民地を持っているんじゃなかったかな。中国もウイグル民族等の独立運動を抱えており、それを抑えるには反テロ運動を強行する必要がある。米に至っては、世界中で好き勝手なことをしてテロ活動の増産をしている。9.11を越える罪も無い人々をアフガニスタンやイラク、その他の国々で殺しておきながら、まだ殺人を続けている。そんな勝手なことが許される世の中だから、力の弱い人間はテロに走るしかないではないか。

 今回の犠牲者は、テロリストによって殺されたのではない。ロシアの大国主義、ロシアに対する米の応援、米のアラブ抑圧によって殺されたのである。テロ非難だけを報道するマスコミにも問題がある。喧嘩は両成敗すべきである。犠牲者の数だけに着目すれば、全てテロリストの方に正当性はあるだろう。世の中、何か間違っている。

(2004年9月5日記)

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